2010年3月19日金曜日

未来の感覚



紙の片側に絵の具を付け、半分に折って転写する。
簡単な作業の中に偶然と作為が交差する、デカルコマニーという技法に子供たちは夢中になります。
繰り返しが明確な変化を起こし、意識的には作れない複雑さは、具体的な対象を描こうとしだす3~4歳の子供の興味を特に引くようです。


アートにおける技術とは、偶然をコントロールする方法の習得とも言い換えられるでしょう。
興味深い結果を示した原因と方法のパターンを探り、覚えて次の機会に応用する。
点と丸で、顔を描くことも、白と赤の絵の具の混ざりあいがピンクを作り出すことも、このように発見し記憶して、繰り返す中で技術として吸収されていくのだと思います。




3歳児作品 紙、絵の具、グリッターグルーなど サイズB3変形

偶然にでもできていることは、実は既にできることです。
まったく同じ作品を2度作ることはありませんが、偶然を生みだしたときの感覚は手と頭で覚えていて、決して忘れることはありません。


3歳児作品 紙、絵の具、グリッターグルー

そうやって子供の頭の中には様々な手を通して得た記憶が、蓄積されていくのだと思います。多くは言語化されず正に感覚として記憶されているのではないでしょうか。


3歳児作品 紙、絵の具、グリッターグルー サイズB3

制作中の子供たちの手の動きをつぶさに見ていますと、とてつもないスピードで、色と形、手触りから多くの情報を吸収していることが想像できます。それが何なのか、その時に言葉として共有されるものは極一部で、多くは何年も先、どこでどう覚えたかも忘れたころによみがえるのではと考えています。














2010年3月7日日曜日

ようこそこっち側

気球のレリーフ 段ボール、スチロール球、絵の具、54×40×8(cm)  6歳児制作

アイデアが言葉によって紡ぎだされ、それをある整合性をもって形にしようとする。
6歳を過ぎるとそれまでの遊びの発展形としての制作から、現実の再現性に価値を置く制作へと転換していきます。

気球のレリーフ 段ボール、スチロール球、絵の具、54×40×8(cm) 5歳児制作
論理的な思考がメインになり、子供世界からはっきりと大人世界へ踏みいれる瞬間が訪れます。
そうすると教え方、接し方を変えます。素材やアイデアへ興味をリードするやり方から、制作プロセス上に起きる問題を解決するアドバイスの方へ、話し方も変えていきます。
ドローイング、”ビル、飛行機、恐竜、虹” サイズB3, クレヨン、ペン、 5歳児制作
子供の作る横で自分も作ってみたりもします。サンプルとしてではなく、アイデア、方法は皆違い、それらは並列していること、作る上で直面する、問題や戸惑いは、誰にも起きるものであること、などが伝われば良いと思うからです。

2010年3月4日木曜日

適当に、真剣に

和紙を畳んで絵の具に浸すだけですが、それだけでできるものにしては出来上がりの驚き感はとても大きく、これを子供とやると必ず歓声が上がります。
絞り染め和紙のコラージュ、サイズB3,和紙、絵の具、色画用紙

和紙の持つ柔らかさとタフさの恩恵を存分に受けるのに最適な方法。
濡れた和紙をそっと扱う子供の手つきも、繊細に大人びます。

絞り染め和紙のコラージュ、サイズB3,和紙、絵の具、色画用紙

偶然に依る部分が大きな制作なのに、繰り返すと明らかに傾向が出てくるのが面白いところ。
絞り染め和紙のコラージュ、サイズB3,和紙、絵の具、色画用紙
ペンで絵が描いてありますが、これは染める前に描いてます。
作為と無作為の行ったり来たり。適当さが制作にいかに大切かがよくわかります。
アートに必要なのは、真剣な適当さでしょうか。




2010年3月1日月曜日

お雛様いろいろ


雛人形  厚紙、トレーシングペーパー、色画用紙、カラーモールなど サイズ約25×20cm 3から4歳児制作

アイテムの多い、定番が決まった形のものは子供が作るのが難しいのですが、今回は着物の重ねに焦点を当て制作してみました。紙をずらすことで生まれる重ねの色。



同じフォーマットでも、微妙な色合わせの差、背景、顔の作り方で、かなり個々の特色がでます。

女の子は、七五三で着物を着た経験がある子が多くやはり人形に、着物を着せる手つきが細やかです。

扇子の持たせ方で意外に表情の違いが出ます。
男の子は若干人形に照れくささも感じるようで…
段々とかわいいものは女の子の専門になってくるようです。