2010年9月17日金曜日

手からうまれる

イルカ 2歳(もうすぐ3歳)児制作 紙粘土 約3cm

粘土でつくる形と、紙に描く子供の絵はほぼ同時進行で展開します。
殴り描きをしているときには、粘土を同じ場所に山のように積む作業を繰り返し、丸や線を描くようになるとお団子やひもを作り、という具合です。

こちらのとても小さなイルカは、粘土をこねてちぎってという自由な時間の中からうまれました。背びれと小さな口、尾びれ、イルカの形の最小限の要素を粘土の塊からつまみ出しています。

ぞう  約3cm

こちらはイルカのあとにうまれた象です。カールした鼻がなんともリアルです。

粘土は触れているだけで気持ちが良いので、手が自ずと動き出します。伸ばして、丸めて、ちぎって、遊んでみる時間をレッスンでは十分に取るようにしています。一通りの遊びが済むと、子供は粘土を何かの形にしようと試み出します。

遊びから、アイデアが生まれ何かを作らんとする瞬間、そこがとても重要です。手の感触と、頭の中のイメージの数々が次第に整理され、ぱちりとつながる一瞬を自分で感じ取り、動き出すこと。


色を塗りボードに固定した状態

試みの結果が重要なのではなく、予兆を感じ取ることです。「何かできるかも…」という、

子供にとってアートが重要な理由としては、言葉での思考ではなく、手の動きやひらめきに対して敏感であることがあげられると思います。

「イルカを作りましょう」と指示をしたらこのイルカはおそらくできません。もう少し大きくなれば、問題の答えとしてイルカを作れるようにはなると思いますが、そこには「こうしてイルカを作るとおもしろいかも」という心の動きはありません。

こちらは誕生ケーキ 約4cm

個性や表現というものが何を持って作られるのか、というのはとても説明が難しい部分がありますが、作者のその人の中で起きた予兆をもとに作られている、ということが一つの要素とは言えると思います。

予兆が起きるまでの時間(素材を通した遊び)を含めての制作であると考えていただくと、子供のアートとは何なのか、考えやすくなるのではと思います。



2010年9月4日土曜日

想像のバラ

バラ 樹脂粘土、絵の具、スチロール、 約15×20×15cm 9歳

固まるとプラスチックのようになる樹脂粘土は、花を作るのに向いています。のし棒で伸ばし、ハサミで切って花弁を切りだし、重ねながらスチロールの芯に貼りつけていくと、バラの出来上がり。
花弁の縁の曲げ具合がお花らしさを演出します。9歳くらいになると、こういったニュアンスも表現可能になります。しかしこの作品をおもしろくしているのは、やはり色です。形は実物に迫り、色は想像の世界にイメージを広げる。鈍い緑の葉っぱが多色使いのバラをぐっと引き締めています。

リアルさとは何なのか、思考を喚起する作品です。