2014年1月17日金曜日

子供と言葉とアートの関係

以前英語で教える幼稚園でアートを教えていた事があります。生徒は日本人も外国人もいました。そこにイタリアから男の子が来ました。年は5歳、彼はイタリア語がしゃべれるのみで英語も日本語もわかりません。先生の中にもイタリア語がわかる人はいませんでした。よって彼は朝の9時から15時くらいまで誰とも言葉が通じない状態におかれました。先生たちはわずかな基本的なイタリア語と身振り手振りで最低限のコミュニケーションをとろうと試みました。
週に二回アートの授業があり私が教えていたのですが、意外な事に言葉が通じない事はそれほど困りませんでした。その日作るもののサンプルを見せ、手順を実際に作業を見せながら説明する。それで授業は進んで行きました。

ほっとしながら作業を見守っていましたが、どうやらその子はアートがとても好きなようでとても集中して制作していました。毎回待ってましたとばかりに今日は何を作るのかと迫ってくる勢いでした。レッスンを重ねるたびに作品への執着はより強く、密度はグングン上がって行きました。同じクラスの子とはちょっとレベルが違うくらいの完成度に瞬く間になって行き、アートが大変得意な子として先生たちにも認識されて行きました。


よくいわれる事ではありますが子供の様々な事柄への吸収力はとどまる事はなく、その子は英語も大変な早さで覚えて行き2、3ヶ月すると普通に友達や先生と会話をするようになっていました。私に対しては日本語で冗談を飛ばすほどでした。

コミュニケーションへの不安がなくなって行く事に先生たちは安堵していきましたが、その頃から私は彼の制作への変化を感じだしました。語彙が増え、会話に不自由がなくなるにつれアートへの熱意はみるみる下がって行きました。何か作るよりしゃべる方が楽しくなってきたのです。それからは彼に対してしゃべらないように注意する事の方が多くなり、以前のように制作に没頭する事はなくなりました。

アートの先生としては寂しくもありますが、以前の状態が異常であったのです。言葉のコミュニケーションが断たれた為その分がビジュアルでのやり取りに注がれていた、という事だと思います。そう思うに至ったのは同じようにフランス語しか話せない子をその後に教えた時も英語がわかるようになるまでの数ヶ月、アートに対して大変な集中を見せるという姿を見た為です。


あとにも先にもあれほど没頭して制作するこどもの姿というのは見たことがありません。
アートを教えていますのでアートをより好きになってほしい、すばらしい作品を作ってほしいとはいつも考えていますが、限度があるという事はこの経験からよくわかりました。あのままずっと周囲と言葉の通じない状況におかれていたら、彼はすばらしい作品を作り続けたのでしょうか?レベルアップし続け偉大な芸術家になるのでしょうか?


言葉の習得と、周囲との意思疎通と、集団生活とそこから得る諸々がありその先に子供にとってのアートがあるという事なのだと思います。全方位にすべて子供ががんばるという事はありません。現状だけをみてその子に能力があるとか、才能があるとか簡単にいうべきではないです。環境により子供の状態は刻一刻と変わります。能力と思われるものが消えて行くこともよくあります、でもそれは引き戻そうとはせず、次の他のものに興味が移って行ったという事で、いってらっしゃいと見送るのが先生の役割であるとイタリア人の男の子のアートに燃えていた数ヶ月の姿を思い出します。





現在決まっているスケジュールです。
お申し込みお問いあわせは各主催者へお願いいたします。


出張個人、少人数レッスンはメールにてお問い合わせください。
パーティなどへの出張レッスンも行います。




2.5歳〜6歳
年齢によりクラス分けあります。
10時〜
11時50分〜

1月19日
「ペットボトルで作るスノードーム風こけし」

2月2日
「バレンタイン〜毛糸で作るあったかハート」

3月16日
「木材パーツで作るお家」




3歳以上
14時〜白金台いきいきプラザにて

2月16日
「大空に飛ぶ気球のレリーフ」




3~6歳

1月26日
「紙版画〜新年のモチーフ」


2月11日
東京国際フォーラム
にてワークショップ(詳細はお待ちください)

2月23日
「内容未定」


3月9日
「内容未定」









2014年1月14日火曜日

年相応ってなんだろう

本年もどうぞ皆様宜しくお願いいたします。

最近レッスンをしていてよく
「うちの子はまだ〜ができないのですが?」
と保護者の方に聞かれます。
「まだこの年では〜はできない場合が多いです。」
と答える事がほとんどです。

〜は筆を正しく握れない、人の顔が描けない、色がむらなくきれいに塗れない、
はさみがうまく使えない、色を塗り分ける事ができない、長時間集中できない、などなど限りなくあります。

教える立場からたくさんの同年齢の子を見て、おおよそこの年ではこのくらいできるかなという、経験から得られる感覚的な平均値はありますが、気になるのはそれから大分はみ出した、実際の年齢よりもかなり先の心配をされている方が多い事です。


できなかった事ができるようになる、子供の成長を感じる一番のポイントだと思います。
しかし他の子よりも、より早くできるようになる事に重きがおかれていると感じる今日この頃です。他人よりも遅れているのではないか、という不安の裏返しが急がせているのかもしれません。かといってより早くできることが、より良くできる事につながるわけではないことは、アートに限ってみても子供を継続して教えているとよくわかります。その年齢の頭と体でできる事には限度があるということは忘れてはいけないポイントだと思います。


5歳になるまでクレヨンは同じ1色しか使わなかったが、ある時からたくさんの色をとてもカラフルに使うようになった。粘土にはとても熱中するが絵は全く興味がない。とても繊細な色使いで抽象的な絵を描くが具体的な形は全く描かない。それまで落ち着きが全くなかったのに小学生になり急に制作に熱心になった。6歳になるまで恐竜以外の絵を全く描かなかった。などなど特に2〜7歳くらいまでの子供の興味やそれに伴う能力は実に様々です。場所や周囲にいる人など環境による差も大きく、どの部分ををその子どもの能力として判断するのかも難しいです。

子供の想像や感性に関わる部分では年齢相応であるか否か、という判断は外して考えてみた方がよいのではないかと思います。個性は大人になったときにより輝くほうがよいのではないでしょうか?子供がアートをやるのはプロになるためのトレーニングではなく、将来様々な表現手段を得た時の為、元になる種を撒いているようなものです。ですから本当にその子の面白い部分はきっと今は見えません。わからないからどうでもいいのでなく現状でどうにか理解しようとするがそれは間違っているかもしれないと考え、いずれ未来に理解する人々が現れるだろうから今は余計な手を加えない。大袈裟ですがそういった構えは必要だと思います。



子供がアートする面白さはもちろんそこにつきまとうわからなさに対してもうまく言葉にして伝えて行けたらと思います。では今年も宜しくお願いいたします。


現在決まっている予定です。お問い合わせお申し込みは各主催者までお願いいたします。
個人少人数レッスン、各種パーティなど出張いたします。お問い合わせください。


2.5歳〜6歳
年齢によりクラス分けあります。
10時〜
11時50分〜

1月19日
「ペットボトルで作るスノードーム風こけし」

2月2日
「バレンタイン〜毛糸で作るあったかハート」

3月16日
「木材パーツで作るお家」



3歳以上
14時〜白金台いきいきプラザにて

2月16日
「大空に飛ぶ気球のレリーフ」



3~6歳

1月26日
「紙版画〜新年のモチーフ」
代々木上原社教館

2月11日
東京国際フォーラム
にてワークショップ(詳細はお待ちください)

2月23日
「内容未定」
代々木上原社教館

3月9日
「内容未定」
代々木上原社教館