粘土でつくる形と、紙に描く子供の絵はほぼ同時進行で展開します。
殴り描きをしているときには、粘土を同じ場所に山のように積む作業を繰り返し、丸や線を描くようになるとお団子やひもを作り、という具合です。
こちらのとても小さなイルカは、粘土をこねてちぎってという自由な時間の中からうまれました。背びれと小さな口、尾びれ、イルカの形の最小限の要素を粘土の塊からつまみ出しています。
ぞう 約3cm
こちらはイルカのあとにうまれた象です。カールした鼻がなんともリアルです。
粘土は触れているだけで気持ちが良いので、手が自ずと動き出します。伸ばして、丸めて、ちぎって、遊んでみる時間をレッスンでは十分に取るようにしています。一通りの遊びが済むと、子供は粘土を何かの形にしようと試み出します。
遊びから、アイデアが生まれ何かを作らんとする瞬間、そこがとても重要です。手の感触と、頭の中のイメージの数々が次第に整理され、ぱちりとつながる一瞬を自分で感じ取り、動き出すこと。
色を塗りボードに固定した状態
試みの結果が重要なのではなく、予兆を感じ取ることです。「何かできるかも…」という、
子供にとってアートが重要な理由としては、言葉での思考ではなく、手の動きやひらめきに対して敏感であることがあげられると思います。
「イルカを作りましょう」と指示をしたらこのイルカはおそらくできません。もう少し大きくなれば、問題の答えとしてイルカを作れるようにはなると思いますが、そこには「こうしてイルカを作るとおもしろいかも」という心の動きはありません。
個性や表現というものが何を持って作られるのか、というのはとても説明が難しい部分がありますが、作者のその人の中で起きた予兆をもとに作られている、ということが一つの要素とは言えると思います。
予兆が起きるまでの時間(素材を通した遊び)を含めての制作であると考えていただくと、子供のアートとは何なのか、考えやすくなるのではと思います。